連載企画「お茶に集う仲間たち」について

column

はじめまして、こんにちは。曽根彰宣(そねあきのぶ)と申します。僕の家は、明治時代から五代続く、静岡県にあるお茶農家です。今回、この「& magazine」に参加させていただくことになり、僕の新しい挑戦を、この連載で皆様にお伝えしていきたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。

 

●まずは自己紹介から

僕の家は、明治時代から五代続く静岡茶の農家です。「五代目」と聞くと、さぞ歴史のある老舗の日本茶ブランドだと思う方もいるかもしれませんが、静岡県内のお茶農家さんはみんな、僕の家と同じくらいの歴史をもっています。

でも、そんな歴史あるお茶農家の大部分は、今、とても苦しい状況に追いやられています。「苦しい状況」とひと言で言ってしまいましたが、その理由はいくつもあって、例えば、日本茶を飲む人が減ったことや、後継者がいないことなどがあります。子供の頃から、当たり前に見てきた茶畑の風景が、お茶の名産地である静岡県からどんどん消えていってしまうかもしれません。それを僕は、とても寂しく思っています。

僕は、「諦めて辞めること」と「新しい挑戦をすること」のどちらかを選ぶなら、挑戦することのほうが「楽しい」と思っています。そして、僕の周りには、同じように「挑戦することを楽しい」と思ってくれて、一緒に考えてくれたり協力してくれる人たちがたくさんいます。

だから、新しいことを始める決心をして、今、その準備を始めたところです。

 

●僕の新しい挑戦

僕の家の茶畑は、静岡県の島田市というところにあります。茶畑からは大井川を見下ろすことができて、天気がいいと富士山もとてもきれいに見えます。

実は今から7年前、近所のおばあさんがもう高齢になり、「自分でお茶作りをするのが難しくなったから、この畑を借りて作ってくれないか」とお願いされたことがありました。勢いで引き受けたものの、 その茶畑は手のかかる昔ながらの畑でした。

お茶の木の列はまばらで、整理されていないため農作業がとてもやりづらく、老木のため収穫量も多くありません。 それでも3年踏ん張って作ってみましたが、お金にならない茶畑ということで、おばあさんに返さざるを得なくなりました。借り手もなく荒れていく畑……近くを通るたびに申し訳ない気持ちが胸をかすめました。

この茶畑のすぐ後ろには、小高い丘になった「古墳」があって、その丘には立派な「桜」の木が1本立っています。春にはきっと、桜が満開になるはずです。丘の上からは富士山もきれいに見えるはず。その目の前にある茶畑をきれいに手入れして、そこで採れた茶葉で淹れた新茶を飲みながら、この景色を楽しめたら、最高だろうなと思いました。

それを実現させたい……おばあさんに茶畑を返してからさらに月日が流れたある日、この「耕作放棄園」がいかせる形があるんじゃないかと、あるアイデアが思いつきました! 僕はこの「耕作放棄園」を再び譲り受けて、挑戦することに決めました。

 

●「お茶に集う仲間たち」について

僕のこの挑戦の話を聞いて「それおもしろい!」と言ってくれた仲間のおかげで、今回この「& magazine」に参加させていただけることになりました。連載「お茶に集う仲間たち」では、この僕の「耕作放棄園」の開拓の様子を、伝えていきたいと思っています。

そしていつか、この茶畑で採れた茶葉で淹れたお茶を、これを読んでくださる皆様にも飲んでいただきたいと思っています。もし、静岡の茶畑を直接訪ねていただいて、日本茶を飲みながら桜や富士山をみんなで見ることができたら、最高にすてきだなと思っています。

次回から、畑の手入れの様子などを、こちらで少しずつご紹介していきたいと思いますので、ぜひ楽しんで見ていてください。どうぞよろしくお願いします。

 

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