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“産業”から“アート”へ ネオンの可能性を広げる「アオイネオン」–【AND WOOL】職人さん交流記–

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こんにちは。【AND MAGAZINE.JP:アンドマガジン】の発起人でファッションデザイナーをしている村松啓市と申します。このマガジンをご覧いただいて、ありがとうございます。

私は、静岡県島田市にアトリエを構えて、【muuc:ムーク】と【AND WOOL:アンドウール】という2つのブランドの運営をしています。2つのブランドに共通しているコンセプトが、「人の手から生まれるものづくりを大切にする」ということです。この「AND MAGAZINE.JP」を立ち上げたのも、その想いにつながっています。

おかげさまで最近では、「手仕事だから表現できること」「作る過程を伝えていく」「作り手を育てる」という私たちの取り組みに興味をもっていただき、私たちのアトリエを訪ねてくださったり、ワークショップに参加してくださったりする方が増えています。

そんな中で今回は、高い職人技術でガラス管による看板の制作を行っている「アオイネオン」さんをご紹介したいと思います。

 

●静岡にすごい職人さんたちがいる!

私たちとアオイネオンさんとの出会いは、アオイネオンさんが私たちの活動に興味をもってくださって、私たちが行っている「編み機のワークショップ」に参加してくれたことがきっかけでした。

アオイネオンさんは、静岡県静岡市に本社をもつ、屋外の看板やネオンサインの設計・制作をしている会社です。実は、多くの方が「一度は目にしたことがある」ような、看板の制作を手がけている、業界ではとても有名な会社さんです。

ネオンの看板は、ガラス管を使った職人技術のいる仕事で、作れるようになるまで経験年数を要します。近年ではガラス管のネオンよりも、消費電力が少なく耐久性もあると言われている「LED」のネオンサインが主流になっているそうです。

アオイネオンさんは、ガラス管のネオンサインを、自分たちの工房でデザイン設計から制作まで行う高い技術をもっています。

LEDよりも壊れるリスクが高いガラス管ですが、きちんとしたものづくりをして設置環境が良ければ、しっかりと長持ちするとアオイネオンさんの職人さんは言います。

そして、アオイネオンでは、LEDと大差ない消費電力のガラス管の看板を作ることもできるそうです。

 

●“産業”から“アート”へ 攻めた作品づくり

時代の流れとともにLEDのネオンサインが主流になる中、アオイネオンさんがガラス管のネオンサインを制作し続けている背景には、衰退する市場に対して、「産業からアート・エンターテイメント」へ新規開拓を行い、技術を次世代に継承したいという強い想いがあるからです。

ガラス管のネオンがLEDよりもすばらしいのは、360度光らせることができる点です。LEDでは、正面の一方向からしか見せることができません。

そのような面で、ガラス管のネオンはアートやエンターテイメントの世界に広げていくことができる、大きな可能性を秘めていると言えます。

ここで「かなり攻めているなあ」と私たちも感じた(笑)、アオイネオンさんのこれまでの作品をいくつかご紹介します。

▼銀座数寄屋橋交差点や渋谷109の不二家の広告塔

渋谷や銀座に出かけたときに、目にしたことがある方も多いのではないでしょうか。「あの」看板です!(笑)

このような巨大看板を設置するときには、レッカー車で乗り入れて足場を組んで作業するなど、建設業のような要素も大きい仕事なのだそうです。

▼布袋寅泰さんのミュージックビデオに登場する、ギターのシルエットが入ったネオンの椅子

カッコいいですよね!布袋さんのイメージにもぴったりだなと思いました。通常のネオンは感電の危険性がありますが、アオイネオンさんの技術によって触っても熱くなくて安全なものに改良し、この椅子が実現したそうです。

▼ファッションブランド【hazama】のファッションショーに登場する、ロゴの入ったネオンの椅子

hazamaさんのショーにも、演出としてネオンの椅子が登場しています。

この椅子にはブランドのロゴが入っていますが、ガラス管を曲げることができる職人さんは、現在日本で50人くらいしかいないのだそうです。ガラス管の需要の減少とともに職人さんも少なくなり、高齢化も進んで、あと数年で作れる人がいなくなるかもしれない、という状況だそうです。

▼【AND WOOL】のブランドロゴの一輪挿し

そして、私たちのブランドロゴの「&」を型取った、一輪挿しも作っていただきました。本当にかわいらしくて、みんなとても気に入っています。静岡県島田市にある私たちのアトリエにいつも飾ってありますので、機会があればぜひ見にきてください!

ものづくりの担い手となる現場の職人さんの減少によって、ものづくりができなくなるかもしれない……そんな危機感は、アパレル業界にいる私たちもずっと感じていることです。繊維工場やニット工場は次々と閉鎖され、職人さんの高齢化も進んで、数年後には今作ることができている服は、もう作れないかもしれません。

アオイネオンさんの話を聞いていて、私たちもとても共感する部分が多いです。

そしてそんな中、私たちも自分たちにできる活動を続けていますが、アオイネオンさんも「THE ART OF NEON」という取り組みを始められたそうです。これは、看板としての需要が少なくなったネオンを、アートやエンターテイメントの分野で再生していくというものです。

例えば、映画に登場するバーのネオンの作成や、一般の方がデザインした絵をネオン作品にしてプレゼントするコンテストの開催、ネオンを作るときに出る端材を利用したアクセサリーの作成やワークショップなど、幅広く楽しめるネオンの可能性を伝えています。

こちらのサイトでは、アオイネオンさんが制作した「ネオンジュエリー」の販売も行われています。ご興味のある方は、ぜひアクセスしてみてください!

▶︎neoneon.jewelry STORE
https://neoneonjewelry.stores.jp

 

●スタッフが工房を訪ねました!

私たちもアオイネオンさんのものづくりの現場に触れたいと思い、昨年、その機会をいただいて、工房にお邪魔してきました。ネオンの加工作業の様子も見せていただき、私たちも加工を体験することができました。

ネオンは、ガラス管を熱して手で曲げ、電極を付けてガスを入れることで点灯します。一筆書きのようにして、文字や複雑な形をガラス管を曲げながら作っていき、点灯したときに光って見せたい部分以外は、黒く塗ります。

細かい曲げ方などの設計図はなく、完成形の実物大の図に合わせて、ほぼ手作業で作ります。どう曲げるかは、職人さんの経験と感覚、そして実際に手を動かしながら決めていくそうです。まさに職人技です。

まず、こんなふうに曲げたい部分をバーナーで熱して、曲げた部分も同じ太さになるように、息を吹き込みながら曲げていきます。

ガラス管の両端にゴムキャップを付けて、片方のゴムキャップにつながっているチューブから息を吹き込みます。

形ができたらガラス管の両端に電極を取り付けて閉じ、ガスを入れるためのチップ管を取り付けます。

そして、ガラス管の中を真空にする装置につないで、空気を抜きながらガラス管の中の不純物を取り除き、ガスを入れていきます。

赤系に光る「ネオンガス」、青系に光る「アルゴンガス」など、再現したい色によってガスを変えます。

ネオンの色は、この2種類のガスの使い分けと、透明管(色のついていないガラス管)・着色管(色のついているガラス管)・蛍光管(透明管の内部に蛍光塗料を塗ったガラス管)の3種類のガラス管を組み合わせることによって、数十種類作り出すことができるそうです。

私たちスタッフも、今回「ガラス管の一輪挿し」を体験で作らせていただきました。

高温のバーナーを使用するので、安全のために、耐熱のエプロン、ゴーグル、軍手を着用します。

ガラス管の曲げる部分に印をつけてもらい、柔らかくなるまでできるだけ均一にバーナーで熱していきます。

柔らかくなってきたらバーナーから離し、少し息を入れながら直角に曲げて、図案の上で角度を調整します。

職人さんはとても簡単そうにやっていたのですが、実際にやってみると、これがかなり難しい(笑)

バーナーで熱する時間が短すぎると曲げた部分にしわのような跡が残ってしまったり、息を吹き込む量が多すぎると膨らんでしまったり、直角に曲げるだけでもひと苦労でした。

自分たちとは異なる業種の職人さんたちとの交流は、新たな発見などがあり大変勉強になります。一方で、共感する部分も非常に多く、アオイネオンさんの「技術を新しい価値観として提案する」挑戦は、私たちの励みにもなります。

本当にすばらしいと思います。

アクセサリーやインテリアなどの作品も積極的に作っていらっしゃるので、コラボ商品を作ったり、一緒にワークショップを開催したり、何か楽しい企画を考えたいと思っています。

手仕事の可能性を、アオイネオンさんと一緒に伝えていきたいと思います。引き続き、応援どうぞよろしくお願いします!

アオイネオン株式会社
静岡県静岡市に本社をおく、ネオンサインや看板の設計・製作・施工を行う会社。「産業からアートへ」をテーマに、ガラス管によるネオンサインを制作し、様々なアートやエンターテイメント作品の現場に提供している。また看板にとどまらない、ファッション雑貨・インテリア雑貨などの制作やワークショップなども積極的に行なっている。
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