手仕事のすばらしさを伝えたい–【AND WOOL】×【装いの庭】共同プロジェクト「いろんな手」への想い–
こんにちは。【AND MAGAZINE.JP:アンドマガジン】の発起人でファッションデザイナーの村松啓市です。いつもこのマガジンをご覧いただいている皆様、ありがとうございます。
昨年コロナ禍に立ち上げた、繊維・アパレル産業の新規事業開発や市場創出の支援を行っている【装いの庭】との共同プロジェクト「いろんな手」。この活動は「手仕事から生まれるものづくりのすばらしさを伝えたい」という想いから、賛同してくださった【装いの庭】代表の藤枝大裕さんと、手仕事によるものづくりをしながら活動しているブランドさん・作家さんたちのご協力により実現したプロジェクトです。
今日は、昨年開催した第1回目のイベントの様子をご報告しながら、改めて活動への想いを書かせていただきたいと思います。最後まで読んでいただけるとうれしいです。
●プロジェクト「いろんな手」への想い
今、私たちを取り巻く繊維・アパレル産業は、非常に厳しい状況になっています。新型コロナウイルス感染拡大という予期せぬ世界的なパンデミックが起こり、それが予想以上に長引いて3年目に突入していることも、もちろん背景にあります。しかし、実はそれ以前からさまざまな課題に直面し問題を抱えている状況にあったと、私自身は考えています。
「手仕事」によるものづくりは、大変な手間と時間がかかり、大量生産ができません。そのため、消費サイクルが加速し安価な商品が求められるようになった時代には、効率の悪いスタイルだと判断されるようになってしまいました。
ビジネスとして時代に合う形を実現する方法を多くのブランドさん・作家さんが模索していますが、それが叶わないまま諦めてしまう人たちも私は数多く見てきました。「手仕事」によるものづくりから生まれたものは、一度失われてしまうと、もうこの世界のどこにもないものがたくさんあります。本当に悲しいことだと思っています。
今、大量生産・大量消費の時代は終わりをむかえようとしています。愛着をもって長く使えるものを日々の中に取り入れる、より「丁寧な暮らし」に豊かさを感じる人も増えています。「手仕事」によるものづくりは、作る人も使う人も幸せにしてくれると、私は信じています。
ファッション業界で仕事を続けてきた中で、私はずっとそのことをたくさんの方に体験して実感してもらいたいと思っていました。ワークショップなどを多数開催してきたのも、そのような想いからです。
私の想いに共感してくださった多くのブランドさん・作家さんのおかげで「いろんな手」を立ち上げることができました。長年取り組んできた活動が、少しずつ広がり始めていることを実感して、とてもうれしく思っています。この活動をこれからも丁寧に育てていきたいというのが、今の私の想いです。
このプロジェクトの立ち上げの経緯や、一緒に運営を行ってくれている藤枝さんのインタビューは、以前【AND MAGAZINE.JP】でもご紹介させていただきました。こちらもぜひご覧いただけるとうれしいです。
▶︎【AND WOOL】×【装いの庭】共同企画のプロジェクト「いろんな手」がスタートします!
https://andmagazine.jp/2021/02/16/20210216/
●第1回イベント「いろんな手」の様子
プロジェクト立ち上げ後、最初に企画したのが、店舗で開催したイベント「いろんな手」です。コロナウイルス感染拡大の影響を受け、お客様と直接触れ合う機会がなくなっていた中、さまざまな考えや想いを抱えての開催になりました。
静岡の山間にある店舗まで、わざわざ足を運んでもらえるのか……せっかく参加してくれたブランドさん・作家さんたちを、がっかりさせてしまう結果になるのではないか……。不安が多い中、今できるベストな販売環境を作るために、スタッフみんなでアイデアを出し合って開催に至りました。
イベント当日は、私たちの不安が一瞬で吹き飛ぶほど、朝からたくさんのお客様が来店してくださいました。遠方から足を運んでくださった方もいらっしゃいました。販売会やワークショップを通して、普段は出会えないような作品・製品と触れ合いながら、作り手の皆さんとも楽しそうに交流していました。
お客様が喜んでくださったこと、そして、参加してくださったブランドさん・作家さんの笑顔が溢れていたことが、とてもうれしかったです。
私自身も「出張写真館」のイベントに参加して、友人や家族と一緒に写真を撮ってもらいました。とてもすてきな思い出の1枚になり、今も部屋に飾っています。
このイベントをきっかけに、その後、交流が生まれた方々がいらっしゃるという話も私のところに届きました。第1回目のイベントは、静岡・山梨・長野のブランドさん・作家さんに参加していただきましたが、今後はさらに広がっていけばいいなと思っています。オンラインなども活用しながら、「いろんな手」が皆様の交流のきっかけになるような取り組みをしていきたいと考えています。
●改めて「手仕事」っていいな
「いろんな手」では、今後このようなイベントの開催をはじめ、ワークショップや販売会、コラボレーションによる商品開発など、さまざまなことに挑戦していきたいと考えています。今は皆さん非常に厳しい状況にありますが、手仕事によるものづくりに関わっている方々とお話しさせていただく度に、私はいつも「手仕事っていいな」と改めて実感することが多いです。「このすばらしさを知らないなんてもったいない!」と思うくらいです。
【AND WOOL】では、在宅ワークを必要としている方や就労支援事業所さんに、手仕事を発注する雇用創出の活動も行っています。手先を細かく動かすことは、体にも心にもいいことがわかっています。そして、そのような繊細な作業から生まれる製品には、オートメーションの機械では再現することができない「風合い」が生まれます。
下の写真は、第1回目のイベントで開催した「針刺し編みワークショップ」の様子です。皆さん、あれこれ考えながら手を動かして、それぞれの力加減でカゴを編み上げていました。完成した針刺しは、1つ1つ、ちょっと大きかったり小さかったりしていて、可愛らしさもひとしおです。
手仕事から生まれるものは、その1つ1つが、大量生産の中で作られるすべて均一の製品にはない「表情」をもっています。新しい時代の「ものとの付き合い方」に必要なのは、自分の中のそういった気持ちを丁寧に育てていくことではないでしょうか。
●今年もイベントを開催予定です
この2年、繊維・アパレル産業は大変な苦境に見舞われましたが、私個人の実感としては、直接の交流ができなくなってしまった中「たくさんのお客様や仲間たちに助けていただいた」という気持ちです。完全に乗り越えることができたとはまだまだ言えない状況ですが、ここからは、少しずつでも皆様に恩返しをしていく気持ちで活動を行なっていきたいと思っています。
実は、皆様の外出の機会が増えている様子を受けて、現在「いろんな手」の第2回イベントを企画中です。近日中にこちらのマガジンで詳細をお知らせできると思います。楽しみにお待ちいただければ幸いです。
今年は、より幅広い方々にこのプロジェクトを楽しんでいただけるような企画を考えながら、新しいことにもどんどん挑戦していきたいと思っています。引き続き、私たちの活動を見守っていていただければ大変うれしく思います。どうぞよろしくお願い致します。