ホワイトカシミヤ 〜White Cashmere〜
こんにちは。ニットブランド「AND WOOL:アンドウール」と申します。連載「やさしいニットに仕上がる理由」では、素材から製品開発、製造現場まで、私たちの作るニットの背景にあるストーリーをお届けしています。
今日は、私たちが次の秋冬シーズンに向けて制作の準備を始めている、「ホワイトカシミヤ」素材のニットのお話をしたいと思います。
●「カシミヤ」はなぜ上質なのか?
皆さんは「カシミヤ」と聞くと、どんな印象をもたれるでしょうか? 柔らかくて、肌触りがよくて、上質なニットを思い浮かべるのではないかと思います。
カシミヤは高品質な素材として一般的にもよく知られています。では、なぜカシミヤはあんなにも柔らかくて軽くてふわふわで、しかも暖かいのでしょうか。
カシミヤは、「カシミヤ山羊」の毛から作った糸や毛織物のことです。カシミヤ山羊は主に中国やモンゴル、ネパールの高い台地の、非常に寒暖の激しい場所で暮らしています。過酷な環境で生きるために、カシミヤ山羊の毛は毎年季節をまたいで生え変わり、それらは高い機能性をもっています。
カシミヤの繊維の太さは約13.5〜16.5マイクロン(1マイクロンは1/1000ミリ)。一般的な羊毛よりも細いため、その極細の繊維が集まってできたカシミヤ糸は、羊毛よりも軽く、柔らかく、空気をたくさん含んで、非常に暖かくなるのです。
さらに、羊毛のように毛を刈りとるのではなく、櫛(くし)を使って毛を流しながら集めるという、非常に手間がかかる方法で採集します。
私たちはその高性能の毛を、ちょっとだけカシミヤ山羊から分けてもらってニットを作り、暮らしを快適にするために活用させてもらっている、というわけです。
カシミヤは、私たちに与えられた「自然の恵み」とも言えるものなのです。
●「ホワイトカシミヤ」ってどんな素材?
高性能なカシミヤ山羊の毛から作られる糸は、ひと言でカシミヤとまとめることができないほど、加工方法によって品質に幅が出てしまいます。
私たちは製品を作るにあたって、糸メーカーさんなどにも協力してもらい、いろいろなカシミヤを探しながら、よりよい素材との出会いを楽しんでいます。
そして今回、新たに出会うことができたのが「ホワイトカシミヤ」と呼ばれる白いカシミヤ山羊です。
明治20年創業の「深喜毛織株式会社」さんは、カシミヤを扱うようになって90年以上の老舗の糸メーカーです。こちらから、高品質な「ホワイトカシミヤ100%」の糸を、私たちの今シーズンの秋冬商品の材料として、仕入れさせていただくことになりました。
「深喜毛織株式会社」さんは、洗毛や整毛、染色などの各工程で、他にはない高い技術をもっているメーカーさんです。
私たちが「ホワイトカシミヤ」と呼んでいる糸は、簡単に言ってしまうと、上の写真のような毛の色が白いカシミヤ山羊の毛のみを使って作られた糸のことです。
ホワイトカシミヤの一番いいところは、染色の前に毛を漂白しなくていいこと。通常のブラウン色のカシミヤ山羊の毛を糸にする場合、染色する前に毛を漂白する工程を加えなければなりません。漂白加工をすると糸の繊維が壊れてしまい、どうしても軋みが出たり、仕上がりの風合いに影響が出たりしてしまいます。
しかし、ホワイトカシミヤは最初から白い色なので、この漂白加工が必要ありません。仕上がったニットの風合いや肌触りから、カシミヤ本来の良さが失われることもないのです。また、「深喜毛織株式会社」さんの独自の染色方法で、極力繊維にダメージが残らない方法で染めています。
私たちのブランドから、また新しい上質な製品が生まれることになると思い、今からとても楽しみにしています。
●いい素材との出会いで幅が広がった製品開発
ホワイトカシミヤに出会うことができたおかげで、私たちの今シーズンの秋冬商品の商品開発の幅は、とても広がったように思います。
そのうちの1つが、カラー展開を増やせたことです。今年のカシミヤ100%のストールは、昨年よりも色を増やすことができそうで、さらに発色がきれいな上に、カシミヤ本来のすばらしい手触りも残っています。
そしてもう1つ。これまで私たちが行うには課題が多かった、「手編み機で編んだセーター」の製造販売に、今年の秋冬シーズンは挑戦することにしました。
私たちのブランドでは、「手編み機」と呼ばれる昔ながらの機会を使って、1枚1枚手仕事でニットを仕上げています。「人の手から生まれるものづくり」を、ブランドの大切なコンセプトの1つとしているからです。
これまでは主に、ストール・手袋・帽子などの小物のアイテムを中心に、製造販売を行ってきました。セーターなどを作ってこなかった一番の理由は、大変手間のかかる作業になるため数を作れない、ということでした。しかし今回、上質な素材と出会えたことが、私たちの背中を押してくれました。
限られたお客様にしかお届けすることはできませんが、それでもやろうとスタッフみんなで相談して決めました。こちらの製品は、すでに予約受付を開始しました。「ホワイトカシミヤ」のすばらしさを味わっていただき、お客様からその感想なども伺えればいいなと思っています。
これからも、少しでもいい素材に出会えるように、勉強を重ねながら探し続けたいと思っています。どうぞ今後とも、応援よろしくお願いします。
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