ヤク 〜Yak〜

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こんにちは。ニットブランド「AND WOOL:アンドウール」と申します。連載「やさしいニットに仕上がる理由」では、素材から製品開発、製造現場まで、私たちの作るニットの背景にあるストーリーをお届けしています。

今日は、私たちがブランドを立ち上げてから初めて扱うことを決めた素材「ヤク」についてご紹介したいと思います。

 

●「ヤク」ってどんな素材?

「ウール」や「カシミヤ」に比べて、「ヤク」は一般的には一番馴染みの薄い素材かもしれません。ニットをお好きな方は、この素材の良さをご存知だと思いますが、とてももちもちしていてあたたかいニット製品を作ることができる素材です。

今回私たちは、日本の糸メーカーさんが現地の方と一緒にこだわって作ったヤクの糸を、特別に仕入れさせてもらえることになりました。

この糸メーカーさんが扱うのは、モンゴルの中南部、首都ウランバートル市から約650km離れたバヤンホンゴルの遊牧民の方たちから分けてもらっているヤクの毛です。バリカンやハサミを使わず、繊維を傷つけないように、一頭ずつ時間をかけてブラッシングすることにより、最高の状態で毛を採取しているそうです。

 

●脱色や染色を行わない「ヤク」本来の色の糸

そして、この糸メーカーさんが扱っているヤク100%の糸のもう1つの特長が、「脱色」や「染色」を行なっていないことです。

一般的な「毛糸」は、まず採取した毛を脱色し、その上から染色を施すことで、カラフルな製品に仕上げています。しかし、毛を脱色することで、どうしても繊維がダメージを受けてしまい、弾力やコシが失われるなど、美しく鮮やかな糸にできる反面、ふっくらした質感ややさしく肌触りの良い仕上がりに影響が出てしまいます。

私たちが仕入れたヤク100%の糸は、脱色と染色の作業が行われていない、ヤク本来の毛の色のままの糸です。繊維が痩せ細ることなく、弾力があるのにやわらかい糸で、上質なニット製品を作ることができます。

先ほどご紹介したヤクの写真をご覧いただければわかると思いますが(モップみたいで見るからにあったかそうですよね……笑)、多くのヤクが茶色の毛をしています。

今回、私たちが仕入れることができた糸も、「ブラウン」と「ダークブラウン」の2色。実は当初「グレー」も入れて3色にするつもりでしたが、グレーのヤクは非常に少なく、つまりその毛もとても希少で、今回は仕入れることができませんでした。

無染色の糸は、毛を採取する時期や地域によって、色が微妙に変わります。ですから、扱うメーカーさんは管理がとても大変ですし、私たちのような小さなブランドで、1枚1枚手仕事で製品を仕上げ販売していくようなところでなければ、その良さを生かすことも難しいかもしれません。

染色をしないことで多くのメリットがありますが、色の展開を楽しみたい場合には、やはり専門の技術でできるだけ素材にダメージを与えないような加工が有効です。染色された糸にも無染色の糸にも、それぞれにいい側面があるということですね。素材感が前面に出たナチュラルな感じの雰囲気がお好きな方には、無染色の糸の製品はおすすめです。

 

●「手編み機」で「ヤク」の良さを最大限まで引き出す

ヤクはとても繊維が細いので、触ったことがある方はご存知だと思いますが、ニット製品にしたときの「やわらかさ」は非常にすばらしいです。ご興味のある方は、ぜひ一度、ヤクで作られた私たちのニット製品を手にとってみてください。

私たちのブランドでは「手編み機」と呼ばれる昔ながらの機械を使って、1枚1枚手仕事によって製品を仕上げます。オートメーションの機械で作られる製品と違い、空気をたっぷりとふくみながら編み上げ、さらに私たち独自の風合い出し加工によって、ヤクの良さを最大限まで引き出しています。びっくりするほどふわふわでやわらかい、上質な製品に仕上げています。

私たちは今回、秋冬商品としてヤクのストールとセーターの販売を行うことにしました。

ちなみに、私たちのブランドが今年の夏に挑戦した「クラウドファンディング」では、細巾と大判の2タイプのヤク素材のストールをリターン品としてご用意しました。これが「カシミヤ100%素材」のものと同じくらいの大変な人気を集めました。多くの方がヤクの良さをご存知なのだと、スタッフみんなで驚いていました。

一方で、ヤクの糸の貴重さと良さを知っている方たちからは、「安すぎるから買ったほうがいい!」というお声をいただき、SNSでも話題にしてくださったりと、ありがたい限りでした(笑)皆様からご好評をいただけて、今年ヤクの糸を扱うことにして本当に良かったなと思いました。

これからも、皆様に「素材から楽しんでいただける」ようなニット製品の制作をしていきたいと思っています。どこかで私たちの製品を見かけたら、ぜひ直接手にとってご覧ください。

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